【「まだ見ぬ子どもへ」の手紙2通目】あなたの母が妊娠した日と、私がそれを知った日は1日ずれています@2019年9月16日(月)

まだ見ぬ子どもへ

2通目の手紙にして、時系列がおかしくなるのだが許してください。あなたが産まれてくることが分かったときの話です。言い換えれば、あなたの母親の妊娠が分かったときのことです。

ただ、手放しに幸せな瞬間だったわけではないんです。あなたの母が妊娠に気づいたのは9月15日。私が知ったのは9月16日です。1日のずれがあります。今日はそのことを書きます。

あなたの母親が私に妊娠の報告を「1日遅らせた」理由

おそらく、一般的には妻が妊娠が分かったその日に、夫にその事実を知らせます。でもあなたの母親は私に伝えることを1日待ちました。ためらった、といった方が正確かもしれません。

なぜかというと、あなたの父親は子どもを育てることに消極的であり、その理由をあなたの母親は知っていたからです。「子どもを産み、育て、子どもがいる人生を歩むのか」ということであなたの母親と私は何度も話し合い、何度も別れそうになっていたんです。

あなたの母は「子どもを育てることはずっと夢だったから、子どものいない人生を考えられない」と話し、私は「子どもが産めるなら誰でもいいの?」と誤解のまま平行線をたどりました。今思えばあなたの母が私を子どもを産む道具のように思っていると勘違いして、噛み付いていたんだろうね。

そんなことは全くなかったのに。あなたの母は「あなたとだから、あなたと子どもを育てていきたい」と何度も伝えてくれました。人として、立派な人です。

こんなやり取りが一回だけでなく、何度も何度も繰り返してしまいました。あなたの母も私も、「もう一緒にいられないんじゃないか」、「人生観が違いすぎる」と二人でいることをあきらめそうなっていましたし、実際にあきらめたこともありました。

でも、どちらかが「もう終わりにしよう」と弱音を吐くと、その度に「それはあり得ない!」と声を荒げ、泣いて、二人とも疲れ果てて眠って、また一緒にいることを選びました。

傷つけ合うことも多くて最高の関係でも完全な関係でもない二人です。それでも、「お互い最後の人だね。続けていこう」と話し合って、今も一緒にいます。

こんなことがあったので、あなたの母親は私に「子どもができたよ」と伝えることで、またあの別れそうになってしまう暗い空気を呼び戻してしまうのではないかと不安だったのだと思います。これは本当にごめんなさいと思います。妊娠が分かったその瞬間に喜びも不安も分かち合いたかったんじゃないかな。

この辺り、あなたから母にいつか聞いてみてください。で、私にもこっそり教えてください(笑)。

あなたの母親との時間が減ることは、耐え難い恐怖なんです

私が「子どもはいらない」と考えていた理由はシンプルです。私はあなたの母親との時間が減ることが怖かったのです。私はどちらかというと家庭より仕事を重視するタイプですし、「家庭に生きる」人間ではないです。それでも、あなたの母との2人の時間はかけがえのないものなのです。

なんでこんなに大切なのか。あなたの母親は「運命だから♪」とか「前世から決まってたの♪」とか幻想的なことを言うかもしれません(笑)。かと思ったら「結ばれたんじゃなくて結んだの」と自発性を主張し始める可能性もあります(笑)。

この辺りの思想はAimerさんの「蝶々結び」を聞いてみてください。

私はあまり夢のあることを考えないので、現実的な理由を言葉にしてみます。おそらくは、あなたの母親と私は関係性がとても多いから、大切なんです。いわば、切っても切れない関係にあります。

ちょっと列挙してみますか。
・母親と父親
・妻と夫
・恋人
・女性と男性
・相談相手
・ちょっとした日常の共有仲間
・趣味友達(音楽)
・趣味友達(食べ物)
・趣味友達(漫画)
・趣味友達(本)
・学歴マウンティング(笑)
・教える関係(あなたの母から私の場合は暮らしや幸せについて)
・教える関係(私からあなたの母の場合は仕事について)

細かくすればきりがないです。食べ物にしてもパスタであればカルボナーラなどのクリームパスタよりもペペロンチーノなどのオイル系が好きとか(笑)。固有名詞レベルで繋がっている関係が多いんです。

だから、一つの関係が切れたり朽ち始めても、他の関係が動き出したりします。こうなると、切っても切れないんですよね。あなたの母は何よりも「話し合うこと」を大切にする人です。その結果が、多くの関係性をつくることになりました。そして、私はその関係性の一つ一つが大切になりました。

だから誤解しないでほしいのは、決して子どもが嫌いなわけでもなければ、間違ってもあなたが嫌いというわけではないです。ここは重要。あなたの母との時間が減る、あなたの母との関係の中で前に出ないものが出てくるのではないかという恐怖や不安があるという点が、私を子育てに消極にさせるのです。間違っても子どもを憎んでいるとか、いやいや子育てをするとかはないです。

「子どもはほしくない」とさえ考えていました

私が「子どもはほしくない」と思っていた理由は実は2つあります。1つ目が前述した「妻(あなたの母親)とのかけがえのない2人の時間を減らしたくない」です。2つ目の理由は、私自身の性格にあります。私の中には家庭を崩壊させるDNAもあれば離婚に導くDNAもあるとずっと思ってしまっているんです。

私の「人を傷つける遺伝子」は私の代で終わらせようと思っていました。それを話すために、私の家族、特に父親の話をします。

私の家族は事実上崩壊しています。その原因には家族の中の問題も外の問題もありますが、中の問題の大半は私の父親にあると思っています。中小企業の社長として30年くらいかな、経営してきた成功者です。私も今でも憧れも尊敬も抱いている存在です。この人には何度も助けられましたし、目標にもなっていました。

ただ、家族との関係の作り方、私や私の兄との関係の作り方は「条件付きの愛」であり、株主と経営者のようなものでした。「私の言う通りに実行し、結果を出せば、愛する」であったり、「金は出してやる。ただし使い方は指定する」といったものです。そんな関係に疲れた私と私の兄は、父親から離れました。

で、なぜ私の父親との関係と私の「子どもはほしくない」という気持ちに繋がるかが大事です。実は、私はこの私の父親と性格が似ているんです。考え方も似ていますし、興味そのものも私が歳を取るたびに似るようになりました。父の本棚に私が自分で買った本が3~4冊あった時は「血だねぇ」としみじみ思ったものです(笑)。

家族と子どもとの関係を事実上の崩壊に導いた父親に似ている私は、結婚することも子どもを産み、育てることも恐れがあります。それは今も。一番大切な存在をいずれ壊してしまうのであれば、最初から関係を築かない方が良いと考えてしまっていました。家庭崩壊DNAも離婚DNAも持っているんです。

ここまで書いてB’zの名曲『BAD COMMUNICATION』の歌詞の一節を思い出したので、載せておきます(笑)。これ、良い曲よ。英語バージョンがあったり、複数のパターンがある曲なので何度でも楽しめます。

そう逃げてる いつかそれを失うのが怖くて
かけがえのないものを作る ことから逃げ出してる

B’z「BAD COMMUNICATION」J-Lyric.netからの引用

結婚も子育てもポジティブエラーです

あなたの母との時間を失い、一つの関係性に固定し朽ちる不安があり、さらには私の家庭崩壊DNAと離婚DNAの恐怖を超えて、それでもあなたに会いたいと思った理由も書いておきます。

一つはやはりあなたの母との関係についてです。あなたの母はあなたを育てられるかプレッシャーも感じながらも、あなたの話をするときにとても柔らかい笑顔を見せてくれます。待ち望んでいるんでしょうね、あなたと顔を合わせることを。その表情を見ていると「子どもと生きていく道を選んたことが、間違ってなかった」と思えます。

きっとあなたの母親と私は「母親と父親」という関係を増やしていくことになります。時には教育観の違いですれ違うこともあるでしょう。あなたの母と私は全く違う人間だなと思うことばかりですから。でも、そうなった時はまた「教育観を話し合う関係」が二人に足されます。二人の関係が続く、かつ新鮮に続く理由が見つかったと言えるはずです。

あなたのおかげで、あなたの母と私の関係はより永続的なものに近づくんです。

そしてもう一つ、あなたと私の関係についても触れておきます。「どんな関係になるんだろう」という興味が、私の恐怖と不安を上回っています。この手紙もそうです。この手紙をあなたは疎ましく思うかもしれない。叩き台にしてくれるかもしれない。はたまた、見向きもしないかもしれない(笑)。どう扱ってくれても構わないし、想像もつかないから興味があります。

私は一人で生きて一人で早めに死のうと思っていました。それなのにあなたの母は、私の人生を180度変えていきました。ポジティブエラーです(笑)。あなたとの関係も、私にとってはポジティブエラーになるんじゃないかと、思っています。

子と父という関係だけでなく、たくさんの関係を結びましょう。
では、引き続き産まれてくることを待っています。

不完全な父より

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◆ライティングパートナー、採用マーケッター(佐野創太):採用企業と求職者、経営者と社員、コンサルタントとクライアント、アーティストとファンの間の『誤解の解消』『本来の関係への回復』します ◆V系深読みライター(神谷敦彦):『ヴィジュアル系の深読み話』を書いています ◆#ともラク で共働きの書籍作りを実況中です